このページでは、車庫の移転・変更に必要な行政手続きに必要な法的要件を解説します。
手続きの種類
認可申請です。申請書を運輸支局に提出して、その後審査の後、問題がなければ認可となります。
認可までの期間
車庫の変更や新設などの事業計画の変更認可申請の標準処理期間は4か月です。
実際のところ実務ではもっと早く認可が下ります。
各運輸局の標準処理期間についてはこちらのリンクをご覧ください。
施設の要件
審査基準を箇条書きに列挙すると以下のとおりです。
- 原則として営業所に併設。
併設できない場合は、営業所から直線で2キロメートルの範囲内にあって、管理が十分可能であること。 - 建築基準法、都市計画法、消防法、農地法などの関係法令に抵触しないものであること。
- 車両と自動車車庫の境界及び車両相互間の間隔が50cm以上あること。
- 営業所に配置する事業用自動車の全てを収容できること。
- 3年以上の使用権原があること
- 車の点検や清掃、調整ができる充分な広さがあること。
- 点検や簡易な整備などができる測定用器具、工具が備付けられていること。
- 車庫から道路への出入口が、車の出入りに支障のないものであること。
- 車庫の前面道路が車両制限令に抵触しないものであること。
前面道路が私道の場合は、その私道の所有者の承認があること。さらに私道に接続する公道が車両制限令に抵触しないものであること。
それでは個別に詳しく見ていきましょう。
原則は営業所に併設
貸切バスの車庫が営業所に併設されているのが理想です。
しかしそうそう理想通りに行きません。
それで公示では、「併設できない場合は、営業所からの直線距離で2km以内」であり、運行管理に支障がなければ併設でなくてもかまわないと規定されています。
これ以外には、営業所のような営業区域内になければならないというような地理的な制限はありません。
つまり、2km以内であれば川の向こうの他府県でもかまわないということです。
実際に、東京都大田区に営業所がある事業者の車庫が、川崎市川崎区で認可を取ってたりします。
貸切バスの車庫は営業区域内になくてもかまわないということです。
建築基準法、都市計画法などの関係諸法令に違反していないこと
次に、車庫が建築基準法や都市計画法などの関係諸法令に違反していない物件であることです。
建物の中に車庫を設置する場合に特に注意が必要です。
都市計画法の用途地域や消防法の規定などに抵触していないか、事前に調査が必要です。
以前に依頼された案件では、用途地域では問題ありませんでしたが、消火設備に不備があって、消火設備を設置してもらったということがありました。
事前チェックはとても重要です。
休憩仮眠施設・車庫との位置関係
ほとんどの場合、営業所と休憩仮眠施設、車庫が1か所にある方が、便利ですし、管理もしやすいでしょう。
しかしそれらをすべて1か所に揃えるのが難しい場合も多いでしょう。
その場合は、営業所・車庫・休憩仮眠施設がそれぞれ2km以内にあり、適切な管理ができるのであれば認められます。
車両と車庫の境界や車両相互間の間隔が50cm以上あること
ここが自家用車の車庫証明の取得と大きく異なることなので、事業者さんでも理解していない方が多いです。
事業用自動車の車庫では、車と車庫の境界、また車どうしの間の間隔が50cm以上なければなりません。
なぜ50cmの間隔が必要かというと、主に日常点検のために車の外回りをぐるっと一回りしてチェックするためです。
おおよそ大人一人の肩幅分と思ってください。
この50cmという数字は、車両制限令でも使われています。
営業所に配置する事業用自動車をすべて収容できること
車庫には営業所に配置する事業用自動車をすべて収容できなければなりませんが、1か所である必要はありません。
営業所からの直線距離が2km以内であれば、複数の車庫に分散していても構いません。
土地、場合によっては建物の使用権原
自社所有の土地を車庫にしている場合や、土地を借りている場合、倉庫などの建物の中に営業所も車庫もある場合など、いろいろな態様があるでしょう。
それぞれの場合について解説します。
土地が自己所有の場合
これは簡単で、土地の不動産登記簿謄本(登記事項証明書)で、自己所有であることを証明できます。
ただし、まれに勘違いする人もいるのですが、社長個人の所有と会社の所有とは違います。
社長個人の所有の土地を車庫として使用する場合は、社長と会社の間で賃貸借契約など結ぶ必要があります。
土地を借りて車庫と場合
この場合は、土地の所有者と会社の間の賃貸借契約などが必要です。
ここで注意が必要なのは、その土地の使用目的が「車庫」とか「自動車の保管」とかになっていることです。
使用目的が「建物を建築し所有するため」などとなっていると認可されませんので注意しましょう。
使用目的はほとんどの場合、契約書の第2条に載っていますので、確認してみましょう。
倉庫などの建物を借りて、営業所兼車庫とする場合
私のお客様に、倉庫を借りて営業所兼車庫にしている事業者様が2社あります。
そのような場合では、契約書に両方の使用目的が記載されているかどうか確認します。
まあ、不動産屋さんに紹介されたときに当然確認はしているでしょうが念のために。
あとは関係諸法令のところで述べたように、建築基準法や都市計画法、消防法などにも抵触していないかのチェックも必要です。
特に防火設備が要件を満たしているかどうかは、消防署などに行って相談するのが安心です。
契約期間(使用期間)
土地にしろ建物にしろ契約書には「契約期間(使用期間)」が定められています。
公示では「借用の場合は契約期間が概ね3年以上」と書かれているのですが、実際には申請時で3年を切っていると認可されません。(東京の場合)
また3年以上で賃貸借契約を結んでくれる物件はそう多くありません。
なのでそのような場合は、3年以上借りられる旨の「覚書」を貸主からもらいます。
私がこれまでに申請した案件では、ほとんどこのパターンでした。
車の点検や清掃、調整ができる充分な広さがあること
旅客自動車運送事業運輸規則第47条には、「旅客自動車運送事業者は、事業用自動車の使用の本拠ごとに、自動車の点検及び清掃のための施設を設けなければならない。」と規定されています。
車庫には、点検や簡易な整備などができる測定用器具、工具が備付けられていなければなりません。
ただし、「使用の本拠ごと」なので、複数の車庫がある場合は、1か所で構いません。
また、「点検及び清掃」なので、洗車ができることは要件ではありません。
まあ、洗車ができるに越したことはありませんけどね。
車庫から道路への出入口が、車の出入りに支障がない
車庫から道路へ出たり、道路から車庫に入ったりするのがスムーズにできる位に、出入口が十分に広くなければなりません。
前面道路が狭い場合は、より広い出入口が必要になるかも知れません。
車庫の前面道路が車両制限令に抵触していない
事業用自動車の車庫では、前面道路の幅員(幅)が車両制限令に抵触していないことが必要です。
道路の幅員については、道路管理者から幅員を証明する書面をもらいます。
前面道路が公道の場合
前面道路が国道の場合は、道路の幅員の証明は不要です。
前面道路が国道以外の公道の場合は、それぞれの自治体の道路を管理する部署で取得することになります。
道路を管理する部署は自治体によって異なりますので、役所に電話して訊いてみるのが早いです。
前面道路が私道の場合
前面道路が私道の場合は、まず車庫から公道へ出るまでに通過する私道の所有者から承認をもらわなければなりません。
私道の所有者は、まず公図を取って地番を確認し、地番から不動産の登記簿謄本(登記事項証明書)を取り、所有者欄の住所へ直接行くか、お手紙を書いてコンタクトを取るなどの煩雑な作業が必要です。
さらに、私道に接続する公道が車両制限令に抵触しないものであることも証明が必要です。
この過程は公道の場合と同様ですので、上をご覧ください。
終わりに
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